究極のセレブリティ   

2013年 07月 15日

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今日こそはね、もう着ない服は、思い切って破棄するつもりだったん。


6つあるクロゼットが、すべて、パンッパン。

もう、新しい服が入りませんっ。

いちばん、嵩張ってるの、毛皮のコートです。

30着以上はあります。

いえ、デビ夫人や叶姉妹みたいに、

ゴージャスなファーじゃないけど、

これまで30年以上かけて、NYやボストン、LA、マイアミ、

Paris、ロンドンとかのヴィンテージストアで見つけたものがほとんどなので、愛着もある。

その中で、ときどき着るのは、ミンクとレザーのパンク風ロングコートと、

シャンパン色のミンクコートぐらい。

ほかは、この20年ぐらい、いっちども着たことがない。およよ。

イブニングドレスのときに羽織る、ショールタイプも、たくさんある、

でも、いつ着るん?

で、毛皮を見ると、思い出す、あの日のトラウマ・・・・

これは、以前ブログにも書いた話しですが、

まあ、聞いてー、奥さんっ。

話、長いよー。





我が社が、

某百貨店のファーストブランドファッションの広告で、

パリ、ロンドン、ミラノ、LA・・・と有名ファッションフォトグラファーを起用した、

海外ロケのお仕事をしていたとき、

素晴らしい女性に出逢いました。

それは、パリとロンドンのロケで、約2年間、12回もの撮影で、じっくりとつきあった、

イギリス人フォトグラファー、Mary McCartoneyです。

彼女こそ、わたしが実際会った中で、

正真正銘のセレブリティと呼べる女性でした。

メアリーは、ポール・マッカートニーの次女で、

現在ロンドンを拠点に、写真家として活躍する一方、

マッカートニー家を代表して、

動物愛護の啓蒙活動でも大忙しの人です。


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でもパリではじめて会ったときは、おどろきました。

フォーブルサントノーレの瀟洒なホテルの前で

待ち合わせしたのですが、

待っても待っても、彼女は現れないのです。

確か、アシスタント2名を連れてくると。

が、それらしいところにいるのは、ヒッピー軍団のみ。

エージェントに電話しようとした、そのとき!

ひえええーっ、
そ、そ、そのヒッピーらしき軍団が、メアリー御一行さまなのでした。

マジ?

くたびれたTシャツにジーンズという小汚い格好。

すっぴん。

ビーサン。

髪の毛もただ、束ねただけでお洒落さとは無縁という感じ。

ところがミーティングをはじめると、

彼女からただものじゃない、オーラがあふれ出して、

瞳の奥をのぞくと、底知れない知性と教養を感じたのでした。

これは、はじめてメアリーと会ったときの記念すべき一枚。

眼鏡かけてるのが、わしです。

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メアリーはおそらく、

子供の頃から願ったことは何でもかなう・・という

最高に恵まれた環境で育った、

究極のフェイマス&リッチピーポー。



でも、

自分が特別な人と思われることをことのほか嫌がり、

普通の庶民の暮らしを心から楽しんでいるように見えたね。

それはあまりにもいままで注目されすぎて、お金持ちすぎたせい?

服装だって、Top Shopの1枚6ポンド(約1000円)ぐらいのペラペラのワンピースを着て、

足元はビーサンなんて、いうくだけた格好ばかり。

いわゆる、ブランドものを着てたのを見たことがありません。


ジュエリーだって、本物の宝石は小さなルビーのピアスだけ。

「これ、ママの形見なの。アンティークよ」
と自慢してましたっけ。

ママとはリンダ・マッカートニーのこと。

彼女も写真家で、ビートルズが活躍した時代、

ジミ・ヘンドリックス,ジャニス・ジョプリン,

サイモン&ガーファンクルなど、ありとあらゆる有名ミュージシャンたちを撮影した、

子供の頃からのセレブリティ。

メアリーはそんなママ、リンダから

「子供の頃ライカのカメラをもらったのがきっかけで、写真家になったのよ」

と教えてくれた。


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そういえば、フォトグラファーのプロフィールの箇所にも

「ポールの娘ということだけは書かないで!」

とエージェントから厳しくお達しがあったのでした。

それとは逆に、

妹のステラ・マッカートニーは、デザイナーとして、

もちろん、とっても実力のある人ですが、

パパ、ポールの名前をいい意味で利用したよね。



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でも、

当時のメアリーは

写真の評価は自分の実力だけで勝負したい!と願っていたようだった・・・。


で、

彼女は、両親の影響もあり、ハードなベジタリアン。

撮影のときのケータリングはベジアリアンオンリーという、

肉食獣ラヴァーのわたくしにとっては

大変厳しいものでありました(ひーっ)

某イギリスのカントリーホテルでは、

ベジタリアンメニューは、通常メニュの2倍ってこともあり、

プロデューサーとして経費を極力抑える役目のわたしには、

アッタマ痛い問題。

もう、レタスだけ出しとくか!(笑)と

思ったこともありましたともっ。

ま、それはさておき。



さて、ようやくここで本題なんだけど(ええええっーーっ?!)

毛皮トラウマ問題とは、そんなメアリーとのロケで勃発。

秋、冬物の、パリでの撮影のときのこと。

商品は、毛皮満載!のアイテムが勢ぞろい。

で、撮影前日、メアリーやクライアントさんを交えての、

モデルオーディションで、

モデルに撮影商品を着用してもらったところ・・・

メアリーのマネージャーが言いにくそうに、

「あのー。実は、メアリーは、毛皮もの撮影できないのよね~」

「はぁ、はあーっ?!」

髪の毛が逆立つってのは、こーゆーときだね。

で、

「毛皮が撮影できないってどういうことざますか?」

と詰め寄ると、

メアリーは、動物愛護協会の会長を務めているので、

毛皮や革製品はNGとのこと。

えええええーー?!

そんなこと、聞いてないよっ。

第一この撮影商品、事前にデータ画像で送ってますやんかあああ?!

見てなかったのかい?

もはやモデルオーディションの会場は騒然!

クライアントさんも真っ青よ。

わたしなんて、もはや心臓一時停止状態っす。

撮影すべき商品は各ブランドさんから借りて、

点数もすべて決まっており、

また印刷物のレイアウトもほぼ決定済み。

それを、なんと撮影前日になって、どーゆーこと?!

あわわわわわーっ、

わたし、クライアントさんにどう説明すればいいのん?

絶体絶命の大ピーンチ!

このときの場の空気は、おそらくマイナス200度。

・・と誰もが凍りつきそうになったそのとき。

メアリーがひっそりとした声で、こう言った。

「あのね、毛皮のストールはやっぱり厳しいけど、

襟に毛皮があしらわれているジャケットはなんとか今回だけ撮ってみるわ」

ほーっ。

するとクライアントさんが、

「ストールは、小物撮影なので、
万一なくてもなんとかなります!」

と答えてくれたのよ~。

ああ、このクライアントさん、本当に最高にいい人でした。
いままで私が一緒に仕事した中でも、
とにかくダントツ!

こうして、なんとかおいらの首は繋がったわけでありますが。

あのときは生きた心地がしなかったね~。

いやあ、しかし、ファッションの撮影で、
毛皮はNGなんて・・・。

でも、冬場のロケでは、ヨーロッパ、寒いやん?

だから、わたしはいつもミンクのファーコートを着ていってた。

メアリーの前ではダウンとか着るようにしていたんだけど、

一度、ParisでYenという蕎麦屋に行ったとき、

うっかり毛皮で行ってしまったんだよ。

で、彼女に見られた瞬間、

「す、すびばせんっ」

と、言う顔をすると、

「大丈夫よ。私だって、ほんとはファーが好きなんだから」

と、お茶目な笑顔を見せたメアリー。

なんとも憎めない素敵な女性でした。


ちなみにこちらがメアリーのサイト


PORTRAITSのところをクリックすると

キラ星のごときセレブリティたちが登場しますよっ。

ちなみにメアリーは、

From Where I Stand と言う本も出してます。

表紙がいいーっ。


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こちらは、セルフリッジで本のサイン会をしたときの彼女。


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今年は、ベジタリアンのクッキングBOOKも出版。



さて、そんなメアリーから以前届いた、

ロイヤルメールは、私の宝物。

メアリーがロケのあと、
激写してくれたなつかしい写真。

場所はパリ郊外のバルビゾン。

ディレクターやコーディネーターなど、撮影チームの写真。

レターセットは英国が誇る、スマイソン。

カードにはMとだけ印刷されていました(かっこいいなぁ。~)

そこにはこんなメッセージが。

Ichiko-

Hope you like this photo.

I think it brings back good memories!

Mary


もう仕事も終わったのに、忘れずにきちんと写真とメッセージカードを

手書きで送ってくれるってところが

やっぱり、ロイヤルな女性です。

唯一残念だったのは、写真の中のわたしが

ロケで走り回っていたせいか、

難民キャンプに参加した怪しいアジア人という風貌だったってことよっ。

by madamregina | 2013-07-15 01:53 | Work